
北陸の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法
目次
- なぜ人事担当者は自分のキャリアを考えにくいのか
- 理由1:「裏方」という自己認識
- 理由2:異動先が限られている
- 理由3:「人事一筋」の価値観
- 理由4:社外のキャリア情報に触れる機会が少ない
- 人事担当者のキャリアの「3つの方向性」
- 方向性1:人事の専門性を深める
- 方向性2:経営に近づく
- 方向性3:事業の現場を経験する
- 北陸の人事担当者が直面する「キャリアの壁」
- 壁1:「この会社で人事として頭打ちになっている」と感じる
- 壁2:「人事の仕事の市場価値がわからない」と不安になる
- 壁3:「転職か残留か」の二者択一に陥る
- 人事担当者がキャリアを広げるための具体的なアクション
- アクション1:経営数字を読む習慣をつける
- アクション2:社外の人事担当者とつながる
- アクション3:「自分の人事としての強み」を言語化する
- アクション4:事業部門の課題を自分事にする
- アクション5:学び続ける仕組みをつくる
- 企業として人事担当者のキャリアを支援する方法
- 方法1:人事担当者にも異動の機会を設ける
- 方法2:社外研修や資格取得を支援する
- 方法3:経営会議への参加機会をつくる
- 方法4:人事担当者のキャリア面談を実施する
- 北陸の人事担当者のキャリアモデル
- モデル1:現場経験→人事→経営参画
- モデル2:人事一筋→専門家
- モデル3:人事→社外での経験→人事に復帰
- 人事担当者のキャリアが組織にもたらす価値
- まとめ
北陸の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法
「人事の仕事は好きですが、自分のキャリアについて考えたことはほとんどありません」——石川県のある食品メーカーで人事を担当している方から、こんな言葉を聞いたことがあります。
社員のキャリア開発を支援し、管理職のキャリア面談をサポートし、若手社員のキャリアパスを設計する。人事担当者は「他者のキャリア」には日常的に関わっています。しかし、「自分自身のキャリア」については驚くほど無頓着な方が多いのです。
これは北陸に限った話ではありませんが、北陸の中小企業では特に顕著です。人事部門が少人数であること、異動先が限られていること、「人事一筋」が美徳とされる風土があること——こうした要因が重なり、人事担当者が自分のキャリアを主体的に考える機会が少なくなっています。
私は、人事担当者自身のキャリアを考えることは、組織全体のためにも重要だと考えています。なぜなら、人事担当者のキャリアの幅が、そのまま人事施策の幅に反映されるからです。事業の現場を知っている人事、経営の数字を読める人事、外部のネットワークを持つ人事——そうした多様な経験を持つ人事担当者こそが、事業を伸ばす人事施策を打てるのです。
この記事では、北陸の企業で働く人事担当者が、自分自身のキャリアをどのように考え、どのように広げていけるのかについてお伝えします。
なぜ人事担当者は自分のキャリアを考えにくいのか
人事担当者が自分のキャリアについて考えにくい理由を整理します。
理由1:「裏方」という自己認識
人事は経営と現場をつなぐ重要な役割ですが、多くの人事担当者は自分を「裏方」と位置づけています。営業や開発のように数字で成果を示しにくいため、「自分のキャリアを積極的に考える」こと自体に後ろめたさを感じる方もいます。
富山県のある部品メーカーの人事担当者は「営業は売上で評価される。開発は新製品で評価される。でも人事の成果って何だろう、とずっと思っていた」と語っていました。自分の貢献が見えにくいと、キャリアの方向性も見えにくくなります。
理由2:異動先が限られている
北陸の中小企業では、人事部門が2〜3名、場合によっては1名で運営されていることも珍しくありません。社内での人事系キャリアパスが限られており、「人事の中でのステップアップ」が見えにくい構造があります。
大企業であれば、採用、教育、制度企画、労務、HRBPなど人事の中でも多様なポジションがありますが、中小企業では一人がすべてを兼務しているため、専門性を深める方向でのキャリアが描きにくいのです。
理由3:「人事一筋」の価値観
北陸には「一つのことを長く続ける」ことを重視する企業文化があります。人事担当者が「営業も経験してみたい」と言うと、「人事の仕事に不満があるのか」と受け取られることもあります。本来、多様な経験はキャリアの幅を広げますが、「一筋」が評価される環境では、ジョブローテーションの希望を出しにくいのが実情です。
理由4:社外のキャリア情報に触れる機会が少ない
北陸では、人事担当者同士が集まる勉強会やコミュニティが都市部に比べて少なく、他社の人事がどのようなキャリアを歩んでいるかを知る機会が限られています。自分のキャリアの「選択肢」が見えないと、考えようがないのです。
人事担当者のキャリアの「3つの方向性」
人事担当者のキャリアには、大きく分けて3つの方向性があります。
方向性1:人事の専門性を深める
一つ目は、人事領域の中で専門性を高めていく方向です。採用の専門家、人材育成の専門家、制度設計の専門家、労務管理の専門家——特定の分野で深い知見を持つ「スペシャリスト」としてのキャリアです。
北陸の中小企業では一人で複数の領域を担当するため、「すべてが浅い」状態になりがちです。そこで意識的に、一つの領域を「自分の軸」と定め、そこを深掘りしていくことが有効です。
例えば、福井県のある繊維メーカーの人事担当者は、「採用」を自分の軸と定め、採用マーケティング、面接技法、候補者体験の設計など、採用領域を徹底的に学びました。結果として、同社の採用力は地域内でも高い水準になり、その担当者は社内でも「採用のプロ」として認知されるようになりました。
方向性2:経営に近づく
二つ目は、人事の視点を経営に広げていく方向です。経営数字を読み、事業戦略を理解し、人事施策を経営の文脈で語れるようになる——いわゆる「戦略人事」「HRBP」の方向性です。
私は、この方向性が北陸の中小企業の人事担当者にとって最も重要だと考えています。中小企業の人事は経営者との距離が近く、経営に直接影響を与えられるポジションにあります。この「近さ」を活かして、経営の言葉で人事を語れるようになることは、大きなキャリアの武器になります。
具体的には、決算書を読めるようにする、事業計画の策定に参加する、経営会議で人事データを基に提案する——こうした経験の積み重ねが、経営に近づくキャリアを形作ります。
方向性3:事業の現場を経験する
三つ目は、人事から離れて事業の現場を経験する方向です。営業、製造、企画など、現場の仕事を一定期間経験することで、人事としての視野が大きく広がります。
石川県のある機械メーカーでは、人事担当者が2年間の営業経験を経て人事に戻ったところ、採用面接での候補者の見方が大きく変わったそうです。「営業として何が求められるかを身をもって知ったので、面接で聞くべきことが明確になった」と話していました。
北陸の人事担当者が直面する「キャリアの壁」
北陸の人事担当者が自分のキャリアを考える際に直面する典型的な壁を挙げます。
壁1:「この会社で人事として頭打ちになっている」と感じる
中小企業で人事を長く続けていると、業務がルーティン化し、成長を実感できなくなる時期が来ます。評価制度の運用、採用活動、入退社手続き——毎年同じサイクルを繰り返している感覚に陥るのです。
この壁を越えるためには、「同じ業務の中に新しいテーマを見つける」ことが有効です。例えば、採用活動は毎年行っていても、「採用候補者の体験価値を向上させる」というテーマを設定すれば、同じ採用活動が全く違う挑戦になります。
壁2:「人事の仕事の市場価値がわからない」と不安になる
営業であれば売上実績、エンジニアであれば技術スキルというように、市場価値を示す指標が比較的明確です。しかし、人事の場合は「何ができれば市場価値が高いのか」がわかりにくく、漠然とした不安を抱える方がいます。
人事の市場価値は、「経営数字と人事施策をつなげられるか」「組織の課題を構造的に分析し、打ち手を設計できるか」「経営者と対等に議論できるか」といった点で測られます。これらの能力は、社外でも高く評価されるものです。
壁3:「転職か残留か」の二者択一に陥る
キャリアに悩む人事担当者が陥りがちなのが、「今の会社に残るか、転職するか」という二者択一の思考です。しかし、キャリアの選択肢はこの二つだけではありません。
社内異動で新しい経験を積む、副業や兼業で外部の経験を得る、社外の勉強会やコミュニティに参加して視野を広げる——転職せずともキャリアを広げる方法はたくさんあります。
人事担当者がキャリアを広げるための具体的なアクション
アクション1:経営数字を読む習慣をつける
人事担当者が最初に取り組むべきは、経営数字を読む力を身につけることです。決算書、損益計算書、貸借対照表——これらを読めるようになるだけで、人事施策を経営の文脈で考えられるようになります。
毎月の経営会議の資料を読み込む、経理担当者に質問する、書籍や勉強会で学ぶ——方法はいくらでもあります。まずは自社の売上高、営業利益率、人件費率の3つの数字を把握することから始めてみてください。
アクション2:社外の人事担当者とつながる
北陸には、人事担当者が集まる勉強会やコミュニティが少しずつ増えています。石川県や富山県の商工会議所が主催するセミナー、地域の経営者団体が開催する人事研究会など、探せば機会は見つかります。
他社の人事担当者と話すことで、「自社のやり方が当たり前ではない」ことに気づけます。その気づきが、自分のキャリアの選択肢を広げてくれます。
アクション3:「自分の人事としての強み」を言語化する
採用に強いのか、制度設計に強いのか、労務管理に強いのか、人材育成に強いのか。自分の強みを言語化することは、キャリアの方向性を定めるうえで不可欠です。
言語化の方法として有効なのは、「これまでの人事の仕事で、最も成果が出たものは何か」を振り返ることです。成果が出た仕事の中に、自分の強みが隠れています。
アクション4:事業部門の課題を自分事にする
人事の仕事を「人事部門の仕事」としてではなく、「事業の課題を人の側面から解決する仕事」として捉え直すことで、キャリアの視野が広がります。
営業部門の売上が伸び悩んでいるなら、その原因を人の側面から分析してみる。製造部門の品質問題が発生しているなら、人材育成や配置の観点から改善策を考えてみる。こうした「事業起点の人事」を実践することで、経営に近づくキャリアが自然に形成されます。
アクション5:学び続ける仕組みをつくる
人事領域は常に変化しています。労働法制の改正、新しいマネジメント手法の登場、テクノロジーの進化——これらに対応するためには、継続的な学習が不可欠です。
富山県のある製薬会社の人事マネージャーは、毎朝30分を「人事の学習時間」と決め、書籍、ウェブ記事、ポッドキャストなどで最新情報をインプットしているそうです。「忙しい中でも続けられる仕組みにしたことで、5年間続いている」と話していました。
企業として人事担当者のキャリアを支援する方法
人事担当者のキャリアは、本人の努力だけでなく、企業としての支援も重要です。
方法1:人事担当者にも異動の機会を設ける
人事担当者を「人事部門に固定」するのではなく、計画的に他部門への異動機会を設けることが有効です。2〜3年の現場経験を経て人事に戻ることで、人事としての視座が大きく変わります。
方法2:社外研修や資格取得を支援する
人事関連の資格(社会保険労務士、キャリアコンサルタント、人事総務検定など)の取得支援や、社外研修への参加支援を行うことで、人事担当者の専門性向上とモチベーション向上の両方が期待できます。
石川県のある建設会社では、人事担当者が社会保険労務士の資格を取得した際、資格手当だけでなく「労務の専門家」としての役割を公式に与えたそうです。これにより、その担当者のモチベーションと専門性が大きく向上しました。
方法3:経営会議への参加機会をつくる
人事担当者を経営会議に参加させることは、キャリア開発として非常に効果的です。経営者の視点、事業の全体像、数字に基づく意思決定——これらを間近で学ぶことで、人事担当者の視座が上がります。
方法4:人事担当者のキャリア面談を実施する
皮肉なことに、人事担当者自身がキャリア面談を受ける機会はほとんどありません。上長や経営者が定期的に人事担当者とキャリアについて対話する場を設けることが大切です。
北陸の人事担当者のキャリアモデル
北陸の中小企業で実際に見られる人事担当者のキャリアモデルを紹介します。
モデル1:現場経験→人事→経営参画
入社後に営業や製造の現場を経験し、その後人事に異動。現場の経験を活かした人事施策を展開し、やがて経営幹部として人事を統括するキャリアです。
福井県のある化学メーカーの人事部長は、入社後10年間を営業部門で過ごし、その後人事に異動しました。「営業の経験があるから、採用面接で候補者の適性を見極められる。営業部門の課題も実感として理解できる」と話しています。
モデル2:人事一筋→専門家
人事部門一筋でキャリアを積み、制度設計や労務管理の専門家として認知されるキャリアです。このキャリアの強みは、人事制度の設計・運用に関する深い知見を持つことです。
ただし、このモデルのリスクは、視野が人事部門の中に閉じてしまうことです。意識的に経営の視点や事業の視点を取り入れる努力が必要になります。
モデル3:人事→社外での経験→人事に復帰
一度社外に出て異なる環境で経験を積み、再び人事に戻るキャリアです。転職だけでなく、出向や副業も含まれます。
石川県のある食品メーカーの人事担当者は、グループ会社への出向で経営企画の仕事を2年間経験した後、人事に復帰しました。「経営企画の視点を持って人事に戻れたことで、提案の質が変わった」と振り返っています。
人事担当者のキャリアが組織にもたらす価値
人事担当者が自分のキャリアを主体的に考え、成長し続けることは、組織全体に大きな価値をもたらします。
人事担当者の経験の幅が広がれば、人事施策の幅も広がります。経営数字を読める人事担当者は、経営者と同じ言語で対話できます。現場を経験した人事担当者は、現場に響く施策を設計できます。
北陸の中小企業にとって、人事担当者は「組織の要」です。その要である人事担当者自身が成長し続けることは、組織全体の成長に直結するのです。
まとめ
人事担当者は他者のキャリアを支援する立場にありますが、自分自身のキャリアについても主体的に考える必要があります。
北陸の中小企業の人事担当者は、少人数で多くの業務を担っているからこそ、「自分はどの方向に進みたいのか」を意識することが重要です。専門性を深めるのか、経営に近づくのか、現場の経験を積むのか——方向性を定め、具体的なアクションを積み重ねることで、キャリアは着実に広がります。
まずは、自分の人事としての強みを振り返ることから始めてみてください。「自分は何に強い人事なのか」——その問いに答えられることが、キャリアを考える第一歩です。
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