北陸の企業が「人事と現場の壁」を壊す方法
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北陸の企業が「人事と現場の壁」を壊す方法

#エンゲージメント#採用#評価#研修#組織開発

北陸の企業が「人事と現場の壁」を壊す方法

「人事が考えることと、現場が求めることが、全くかみ合っていない。人事は制度をつくるが、現場は使えないと言う。現場は人が足りないと言うが、人事は予算がないと言う。お互いに不満を抱えたまま、溝が深まっている」——福井県のある機械メーカーの経営者が、ため息をつきながらそう語っていました。

人事部門と現場部門の間の「壁」は、多くの企業に存在します。しかし、北陸の中小企業では、この壁が事業に与える影響は特に大きいです。社員数が限られる中で、人事と現場が協力できなければ、人材の採用も育成も定着も、すべてが中途半端になります。

私は、人事と現場の壁は「構造的な問題」だと考えています。人事担当者が悪いわけでも、現場の管理職が悪いわけでもない。両者の立場、見ている視点、優先事項が異なるために、壁が生まれるのです。

この構造を理解し、壁を壊すための仕組みをつくることで、人事と現場は「対立」から「協働」に転換できます。

この記事では、北陸の企業が人事と現場の壁を壊すための考え方と具体的な方法をお伝えします。


なぜ人事と現場の間に壁ができるのか

原因1:見ている景色が違う

人事部門は「全社最適」の視点で考えます。全社の人件費、制度の統一性、法令遵守、中長期の人材戦略——こうした視点から判断を行います。

一方、現場部門は「部門最適」の視点で考えます。自部門の業績、自部門の人材ニーズ、目の前の課題——こうした視点から判断を行います。

この視点の違いが、「人事は現場のことをわかっていない」「現場は全体のことを考えていない」という相互不信を生みます。

原因2:コミュニケーションの頻度と質が不足している

人事と現場が対話する機会は、年に数回の評価面談や制度説明会に限られていることが多いです。日常的なコミュニケーションが不足しているため、お互いの状況や考えを理解する機会がありません。

富山県のある食品メーカーの営業部長は、「人事からの連絡は、評価の時期とルール変更の時だけ。普段は何をしているのかもわからない」と話していました。人事部門の活動が現場から見えないことも、壁を厚くする原因です。

原因3:人事が「管理者」の立場に立っている

人事部門が「ルールを守らせる管理者」として振る舞うと、現場は人事を「面倒くさい存在」と感じます。「評価シートの提出期限を守ってください」「残業時間の上限を超えないでください」「有給休暇の取得率を上げてください」——こうした管理的な連絡ばかりでは、現場にとって人事は「制約をかけてくる部門」にしか見えません。

原因4:人事が現場の仕事を知らない

人事担当者が現場の仕事を理解していないと、現場に響く施策は打てません。製造部門の仕事の流れ、営業部門の顧客対応の実態、開発部門のプロジェクト管理の苦労——こうした現場の実態を知らない人事が制度を設計しても、現場にとっては「的外れ」に感じられます。

原因5:現場が人事の役割を理解していない

逆に、現場が人事の役割を正しく理解していないケースもあります。「人事は採用と給与計算をする部門」という認識にとどまり、人事が本来担うべき「人材戦略の企画・実行」の役割を知らない。そのため、人事に対する期待値が低く、戦略的な対話が生まれにくいのです。


壁を壊すための5つの方法

方法1:人事が「現場に出向く」

人事担当者がデスクから離れ、現場に足を運ぶことは、壁を壊す最も効果的な方法です。

具体的には、以下のような活動が有効です。

  • 月に1回以上、各部門の現場を訪問する
  • 現場の管理職と30分程度の「雑談」をする
  • 工場のラインを見学する、営業に同行する
  • 現場の社員に「困っていることはないですか」と直接聞く

石川県のある金属加工メーカーの人事担当者は、週に1回、製造現場を30分間歩いて回っています。「最初は『何しに来たの?』という目で見られたが、続けているうちに、社員から直接相談を受けるようになった。制度の改善点も現場で見つかることが多い」と話していました。

方法2:「現場の課題」を起点にした人事施策をつくる

人事施策を「人事部門の都合」や「トレンド」から発想するのではなく、「現場の課題」から逆算して設計します。

具体的なプロセスは以下の通りです。

  1. 現場の管理職にヒアリングし、人に関する課題を洗い出す
  2. 課題の優先順位をつける(経営への影響度×緊急度)
  3. 優先度の高い課題に対して、人事施策を設計する
  4. 施策の設計段階から現場の管理職を巻き込む
  5. 施策の効果を現場の管理職と一緒に検証する

このプロセスを踏むことで、「現場が使える施策」が生まれます。

福井県のある化学メーカーでは、人事部門が年に1回「現場課題ヒアリング」を全管理職に対して実施しています。「このヒアリングが、翌年の人事施策の起点になっている。現場の声をもとにした施策は、現場の協力も得やすい」と人事マネージャーは話しています。

方法3:現場の管理職を「人事のパートナー」にする

人事の仕事を人事部門だけで抱え込まず、現場の管理職を「人事のパートナー」として巻き込みます。

管理職が担うべき人事の役割は以下の通りです。

  • 部下の育成(日常のOJT、フィードバック)
  • 部下のモチベーション管理
  • チームの目標設定と進捗管理
  • 採用面接への参加
  • 部下のキャリア面談
  • 職場環境の整備

これらは「人事部門がやること」ではなく、「現場の管理職がやること」です。人事部門はそのための仕組みとツールを提供し、管理職をサポートする立場に回ります。

方法4:人事と現場の「共同プロジェクト」をつくる

人事と現場が一緒に取り組むプロジェクトを設定することで、協働の関係が生まれます。

共同プロジェクトの例は以下の通りです。

  • 採用活動の改善プロジェクト(人事+現場の面接官)
  • 新入社員のオンボーディング改善プロジェクト(人事+配属先の管理職)
  • 評価制度の見直しプロジェクト(人事+各部門の代表)
  • 組織風土改善プロジェクト(人事+各部門の推進メンバー)

富山県のある機械メーカーでは、採用活動の改善を人事部門と営業部門の共同プロジェクトとして推進しました。「一緒にやることで、営業部門の人材ニーズを直接理解できた。採用の精度が上がっただけでなく、人事と営業の関係性も良くなった」と人事担当者は話しています。

方法5:人事の「情報発信」を充実させる

人事部門の活動や考えを、現場に積極的に発信します。

具体的な方法は以下の通りです。

  • 月に1回の「人事通信」を社内で発行する
  • 経営会議で人事の取り組みを定期的に報告する
  • 制度変更の際は「なぜ変えるのか」の背景を丁寧に説明する
  • 人事データ(離職率、採用充足率など)を定期的に共有する

人事の活動が「見える化」されることで、現場の理解と信頼が得られます。


人事担当者自身が変わるべきこと

壁を壊すためには、人事担当者自身の意識と行動の変革も必要です。

変革1:「管理者」から「パートナー」へ

人事の役割を「ルールを守らせること」から「現場の成果を人の側面から支援すること」に転換します。この意識の転換が、現場との関係性を根本的に変えます。

変革2:「事業の言葉」で話す

人事の専門用語ではなく、事業の言葉で話す努力が必要です。「エンゲージメント」ではなく「社員のやる気」、「リテンション」ではなく「辞めない仕組み」——現場が理解できる言葉で、人事の考えを伝えます。

変革3:経営数字を理解する

人事担当者が経営数字を理解していれば、現場の管理職や経営者と同じ土俵で議論ができます。「売上高人件費率」「一人当たり生産性」「採用コスト」——こうした数字を使って人事の提案を説明できれば、現場からの信頼度が格段に上がります。

変革4:現場の仕事を体験する

可能であれば、人事担当者が現場の仕事を短期間でも体験することをお勧めします。製造ラインに入る、営業に同行する、開発のミーティングに参加する——こうした体験を通じて、現場の実態を肌で感じることが、壁を壊す原動力になります。


壁が壊れた先にあるもの

人事と現場の壁が壊れると、以下のような変化が生まれます。

  • 現場から人事に「こういう人材が欲しい」「こういう研修をやってほしい」と具体的な要望が上がるようになる
  • 人事が提案する施策に対して、現場が積極的に協力するようになる
  • 採用活動で、現場の社員が自発的に協力するようになる
  • 人事制度の運用が円滑になる(評価シートの提出率が上がる、面談の質が上がるなど)
  • 経営者から見て、「人事と現場が一体となって人材の問題に取り組んでいる」状態が生まれる

壁を壊した企業の実例

石川県のある自動車部品メーカー(社員180名)の事例を紹介します。

この企業では、3年前まで人事と現場の関係は「最悪」だったそうです。人事が導入した評価制度に対して現場から「使えない」「現場のことをわかっていない」という声が上がり、評価シートの提出率は50%以下。人事担当者も「何をやっても現場に文句を言われる」と疲弊していました。

転機は、人事マネージャーが「現場に出る」ことを決意したことでした。週に3回、製造現場を30分間歩き、社員と雑談する。営業会議に月1回参加する。開発部門のプロジェクトミーティングにオブザーバーとして出席する。これを1年間続けました。

最初の3ヶ月は「何しに来たの?」という反応でしたが、半年が過ぎたあたりから変化が起きました。現場の管理職から「ちょっと相談なんだけど」と声がかかるようになったのです。「部下が辞めたいと言っている。どうすればいい?」「新人の教育がうまくいかない。何かアイデアはない?」——こうした相談が増え、人事と現場の対話が生まれました。

3年後の現在、評価シートの提出率は95%を超え、採用活動にも現場の社員が積極的に協力するようになりました。人事マネージャーは「現場に出たことで、人事の仕事の意味が変わった。制度を運用する仕事から、人の課題を解決する仕事になった」と振り返っています。


まとめ

人事と現場の壁は、「どちらが悪い」という問題ではなく、両者の立場と視点の違いから生まれる構造的な問題です。

壁を壊すためには、人事が現場に出向き、現場の課題を起点に施策をつくり、管理職をパートナーにし、共同プロジェクトで協働し、情報発信を充実させる。そして、人事担当者自身が「管理者」から「パートナー」へと意識を転換する。

まずは、明日から現場に足を運んでみてください。デスクの前では見えなかった課題と、デスクの前では聞こえなかった声が、必ず見つかります。

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