北陸の企業が「人事制度のスリム化」で運用負荷を下げる方法
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北陸の企業が「人事制度のスリム化」で運用負荷を下げる方法

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北陸の企業が「人事制度のスリム化」で運用負荷を下げる方法

「評価シートの項目が多すぎて、評価者も被評価者も疲弊している。毎回の評価時期になると、現場から不満の声が上がる」——富山県のある化学メーカーの人事部長が、ため息まじりにそう語っていたことがあります。

評価項目は50以上。等級は10段階。手当の種類は20を超える。給与テーブルは複雑な条件分岐が入り組んでおり、人事担当者でさえ全体像を把握するのに苦労している。

こうした「肥大化した人事制度」に苦しんでいる北陸の企業は、実は少なくありません。かつて導入したときには合理的だったはずの制度が、年月を経て改修を重ねるうちに複雑さを増し、本来の目的を見失って「制度を運用すること自体が目的」になってしまっている。

私は多くの企業の人事制度に関わってきましたが、制度が機能していない企業の多くは「制度の内容」ではなく「制度の運用負荷」に問題を抱えています。どんなに素晴らしい制度も、運用できなければ意味がありません。

この記事では、北陸の企業が人事制度をスリム化し、運用負荷を下げながら制度の本来の機能を取り戻す方法についてお伝えします。


なぜ人事制度は複雑化するのか

人事制度が複雑化する原因は、いくつかのパターンに分類できます。

原因1:「例外対応」の積み重ね

「この社員にはこの手当を」「あの部署にはこの評価基準を」——個別の事情に対応するために「例外ルール」を追加していくと、制度は際限なく複雑化します。一つひとつの例外対応は合理的に見えても、それが積み重なると全体の整合性が崩れ、誰にも理解できない制度になります。

原因2:コンサルティング会社の提案の影響

人事制度の改定にあたり、外部のコンサルティング会社に依頼するケースがあります。コンサルティング会社は、自社の知見を活かして精緻な制度を設計してくれます。しかし、その精緻さが「運用できない複雑さ」になっている場合があります。設計は100点でも運用が30点では、制度は機能しません。

原因3:「足し算」だけで「引き算」がない

新しい手当を追加する、新しい評価項目を増やす、新しい等級区分を設ける——こうした「足し算」はよく行われますが、既存のものを廃止する「引き算」はなかなか行われません。「いつか使うかもしれない」「廃止すると影響がある人が出る」という懸念から、不要になったルールがそのまま残り続けます。

原因4:「公平性」の過度な追求

「すべての社員を公平に評価するために、評価項目を細分化しよう」「部門ごとの事情を反映するために、部門別の評価基準を設けよう」——公平性を追求するあまり、制度が複雑化するケースもあります。しかし、複雑すぎて運用できない制度は、結局「公平な運用」もできないのです。


「スリム化」の基本方針

人事制度のスリム化は、「制度を簡素にする」ことではなく「制度の本質的な機能を残しつつ、運用負荷を下げる」ことを目指します。

方針1:制度の目的に立ち返る

評価制度の目的は何か。等級制度の目的は何か。報酬制度の目的は何か。制度の目的に立ち返り、「この項目は目的の達成に必要か」を問い直します。目的に直結しない項目やルールは、廃止の候補になります。

方針2:80点で運用できる制度を目指す

100点の制度設計を目指して運用が30点になるよりも、80点の制度設計で運用も80点の方が、組織にとっての価値は高い。完璧を追求せず、「運用可能な範囲での最適解」を目指します。

方針3:現場の負担を最優先で考える

人事制度の最大のユーザーは現場の管理職と社員です。人事部門の都合ではなく、現場が「無理なく使える」制度であることが最も重要です。


評価制度のスリム化

評価制度は人事制度の中でも最も運用負荷が高い部分です。

評価項目の削減

評価項目が30以上ある企業は少なくありませんが、本当に必要な項目は10〜15程度です。評価項目が多すぎると、評価者は「なんとなくオール3」をつけがちになり、評価の意味がなくなります。

石川県のある機械メーカーでは、評価項目を35項目から12項目に削減しました。削減にあたっては、「この項目で差がつくか」「評価者が具体的な行動を観察できるか」「会社の方向性と合致しているか」の3つの基準で判断しました。

結果、評価にかかる時間が大幅に短縮されただけでなく、評価項目一つひとつの記述が具体的になり、評価の質もむしろ向上しました。

評価段階の簡素化

5段階評価を使っている企業が多いですが、実態として「2」と「4」はほとんど使われず、「3」に集中する——いわゆる「中心化傾向」が起きているケースが大半です。

思い切って3段階評価(期待を超える・期待どおり・期待に達していない)にする選択肢もあります。3段階にすると「とりあえず3」という逃げができなくなり、評価者は明確な判断を求められます。

評価サイクルの見直し

年2回の評価が本当に必要かも問い直します。中間評価が「本評価の予行演習」になってしまっているなら、中間評価を廃止して代わりに四半期ごとの「1on1ミーティング」を導入する方が、フィードバックの質は高まります。


等級制度のスリム化

等級数の削減

等級が10段階以上ある企業は、等級間の差が曖昧になっていることが多いです。「6等級と7等級の違いは何ですか」と聞かれて、明確に答えられる人事担当者がどれだけいるか。

等級数を5〜7段階に削減することで、各等級の意味が明確になり、社員にとってもキャリアパスがわかりやすくなります。

富山県のある食品メーカーでは、12等級あった等級制度を6等級に統合しました。統合にあたっては、各等級に「期待される役割」を明確に定義し、社員が「自分は今どの段階にいて、次のステップで何を求められるのか」を理解できるようにしました。

役割等級制度への移行

職能資格制度(能力で等級を決める制度)から、役割等級制度(担当する役割で等級を決める制度)への移行も、スリム化の有力な選択肢です。

職能資格制度は「能力があれば等級が上がる」仕組みのため、年功的な運用になりやすく、等級と実際の仕事のミスマッチが起こりがちです。役割等級制度であれば、「今、何の役割を担っているか」で等級が決まるため、シンプルで納得感があります。


報酬制度のスリム化

手当の整理

「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」「資格手当」「役職手当」「地域手当」「皆勤手当」「精勤手当」——手当が多すぎると、給与計算が複雑になるだけでなく、社員にとっても「自分の給与がどう構成されているか」がわかりにくくなります。

手当の整理方針として、「基本給に統合できるものは統合する」「利用者がごくわずかな手当は廃止する」「目的が重複する手当は一本化する」の3つが基本です。

福井県のある繊維メーカーでは、15種類あった手当を6種類に整理しました。皆勤手当と精勤手当は基本給に統合し、地域手当は対象者がいなくなったため廃止し、類似した手当は統合しました。

給与テーブルの簡素化

給与テーブルが複雑で、昇給のルールが何十ページものマニュアルになっている企業があります。これを、等級ごとのレンジ(上限と下限)を設定し、その範囲内で成果に応じて昇給する——というシンプルな仕組みに変えることで、運用負荷は大幅に下がります。


スリム化の進め方——4つのステップ

ステップ1:現状の棚卸し

まず、現在の人事制度の全体像を棚卸しします。評価項目の数、等級の数、手当の種類と対象者数、規程の量、運用にかかっている工数——これらを可視化します。

「うちの制度がどれだけ複雑か」を数字で示すことで、経営層や現場にスリム化の必要性を理解してもらいやすくなります。

ステップ2:目的の再定義

人事制度の各要素について、「何のためにあるのか」を改めて定義します。目的が不明確なもの、当初の目的が現在の状況に合わなくなっているものは、廃止または統合の候補です。

ステップ3:スリム化案の設計

棚卸しと目的の再定義をもとに、スリム化案を設計します。ポイントは「一度にすべてを変えない」ことです。評価制度、等級制度、報酬制度のうち、最も運用負荷が高い部分から着手し、段階的にスリム化を進めます。

石川県のあるサービス業の企業では、まず評価制度のスリム化から着手しました。評価項目の削減と評価プロセスの簡素化を行い、現場から「評価がやりやすくなった」という声が上がったことで、次のステップ(等級制度の見直し)への社内の理解が得られやすくなりました。

ステップ4:移行と運用

スリム化した制度への移行にあたっては、社員への丁寧な説明が不可欠です。「なぜ変えるのか」「社員にとってのメリットは何か」「不利益が生じる社員への経過措置はどうするか」——これらを明確にし、不安を取り除きます。

特に、報酬制度の変更は社員の生活に直結するため、経過措置(移行期間中の調整給の設定など)を設けることが重要です。


スリム化で「失ってはいけないもの」

人事制度のスリム化は「とにかく減らす」ことではありません。スリム化の過程で失ってはいけないものがあります。

社員の納得感

制度がシンプルになっても、社員が「なぜこの評価なのか」「なぜこの給与なのか」に納得できなければ意味がありません。スリム化後も、評価の透明性、昇給の基準の明確さ、キャリアパスのわかりやすさは維持する必要があります。

組織の方向性との連動

人事制度は、組織の方向性を社員に伝える「メッセージ」でもあります。「何を評価するか」は「何を大切にしているか」の表明です。スリム化によって、このメッセージが薄まらないように注意が必要です。

マネジメントの質

評価項目を減らしたからといって、マネジメントの質が下がっては本末転倒です。むしろ、評価項目が減った分、一つひとつの項目に対して丁寧な観察とフィードバックを行うことが求められます。


北陸の企業だからこそのスリム化の意義

北陸の中小企業では、人事担当者が1〜2名というケースが多く、制度の運用負荷がそのまま担当者個人の負担になります。制度が複雑すぎて回らない、という状態は、人事担当者の疲弊と離職のリスクにもつながります。

また、北陸の企業は長期雇用を前提とした組織文化を持つところが多く、制度の変更には慎重な姿勢をとりがちです。しかし、「変えないこと」が「良い状態を維持すること」にはなりません。むしろ、環境が変化する中で制度を変えないことは、組織の硬直化につながります。

人事制度のスリム化は、「制度を壊す」ことではなく「制度を進化させる」ことです。シンプルで運用しやすい制度は、現場の管理職にとっても社員にとってもわかりやすく、人事担当者にとっても運用しやすい。結果として、制度本来の機能が発揮されるのです。


まとめ

人事制度のスリム化は、「運用できる制度」をつくるための取り組みです。

評価項目の削減、等級数の整理、手当の統合——一つひとつは小さな変更ですが、積み重ねることで運用負荷は大きく下がります。そして、運用負荷が下がった分、人事担当者も現場の管理職も、「制度を回すこと」ではなく「人を育て、活かすこと」に時間を使えるようになります。

まずは、自社の人事制度の棚卸しから始めてみてください。評価項目はいくつあるか、等級は何段階か、手当は何種類あるか。その数字を見て「多すぎるかもしれない」と感じたなら、スリム化の第一歩を踏み出すタイミングです。

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